PROFILE

松本茂高  Shigetaka Matsumoto

1973年神奈川県生まれ。21歳の時に初めて訪れたアラスカの原野に圧倒され、現在もアラスカを中心とした旅を続けている。
ニコンサロン新宿、モンベル、コニカミノルタプラザ新宿、山梨県北杜市津金学校などで個展を開催。




2013年4月24日水曜日

イエローキャブの車窓から

From the window of the yellow cab







もう10年以上も前になるだろうか。真冬のアラスカで友人の車が壊れてしまい身動きができず、ユーコン川に架かる橋の近くから衛星電話でイエローキャブを呼んだことがある。30の寒さにも関わらず、その車は冷却システムが壊れ、オーバーヒートを起こしてしまったのだ。

フェアバンクスの町から3時間かけてようやくイエローキャブはやってきた。
友人は助手席に腰をかけ、安心したのか、白髪で長い髭を生やした初老の運転手と事の顛末を面白おかしくしゃべっていた。僕はといえば、後部座席に横になって彼らの話に耳を傾けながらぼんやり窓の外を見上げていた。町灯りの全く見えない原野を貫くその道では、車窓から星空がよく見える。後部座席の足下には買い物袋から転がってしまったものなのか、萎びたリンゴやオイルで汚れた革の手袋が転がっている。いかにもアラスカらしい。未舗装道路を走るので、その振動が心地良くいつの間にか眠りに落ちていた。

どれぐらいたったのだろう。目を覚まし、体を後部座席のシートに横たえたままふと窓の外を見ると夜空にオーロラが舞っていた。助手席の友人は軽いいびきをかきながらすでに眠っている。僕はオーロラに向かってハンドルを握っている初老の運転手の横顔をそっと後ろから見ていた。彼にとってもこの夜は特別なドライブになっているのだろうか。そして、フロントガラス越しに見えるオーロラをどのような想いで見つめているのだろう。

10年以上経った今、あの時の光景が思い出され、穏やかな気持ちに包まれる。
なかなか素敵な夜だったな。



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