The world of the far-off distance
Sharing in time with wild bear
赤く染まったナナカマドと緑のハイマツの斜面に黒い塊が見えた。どうやら若いヒグマのようだ。
背後の山の斜面には色鮮やかに赤く染まったナナカマドと緑のハイマツのコントラストのが美しい。しばらく見ているとおやっと思い、その風景の中で一点だけ黒い塊が少しだけ動いたような気がした。急いで300mmのレンズをカメラに装着して確認するとやはりヒグマであった。本来、野生動物は見事な保護色になって風景に取り込まれていると思われるが、案外その広大な風景の中では一点だけ異色な存在をかもしだしている。点のような距離で、時折、顔をあげて辺りの匂いを嗅いで警戒をしながら地面のベリーをしきりに食べていた。
肉眼ではクマとは判らないほどの遠く離れた点のような距離ではあるが、本来、野生動物と人間とは、相容れない遥か彼方の世界で生きているもの。そして、遠くの山の斜面でベリーを食べる若いクマと自分がまさにこの一瞬を共有している。ここはアラスカの原野ではないのだ。クマの背後には広大な大雪山の原野が霧の向こうまで続いている。その時、初めて大地は意味を持ち出したような気がした。
日常生活に追われるような慌ただしい時間を生きる中で、日本のどこかで遥かな時間を生きるクマと出会うということはなんて幸せなことなのだろうと思う。
八月のアラスカの原野でも見られたブルーベリー(クロマメノキ)
真っ赤に染まったナナカマド
最初の二日間、雨と霧が辺りをすっぽりと包み込んでいたが、三日目の朝、山肌を包んでいた雲が動き出し鮮やかに染まった大雪山の山肌が姿を現した。降り止まない雨はない。
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