The monochrome Arctic ocean
15年ほど前に初めて北極海を訪れた。3週間の川旅の末、北極海へとたどり着いた。
アラスカの北極圏はとても広大で荒涼としている。天気が悪く空に雲がかかると夏の白夜にもかかわらず薄暗い。あらゆる全てのものに彩度が失われ、モノクロームの世界に変貌してしまうのだ。そして、北極海から吹き付ける風は身を切るような冷たさで、風の音以外に何も聞こえない。風景に負けてしまうとはこのことだ。否が応でも無言になってしまう。
その当時、ポジフィルムでアラスカを熱心に撮影をしていたが、ふと遊び心でモノクロフィルムでも撮影してみた。
どんよりとした北極海。打ち付ける波もなく静寂そのもの。
木が一本も生えていないはずの北極海沿岸部には巨大な流木がそこらじゅうにある。
しかし、その流木たちは長い長い旅の末、この場所に人知れず打ち上げられたのだ。
ある春の日、遠く離れた内陸奥深くの大河ユーコンやマッケンジー流域に立っていた一本の大木が、雪解けの濁流による侵食の末、海まで流され海流に運ばれてこの場所に打ち上げられたのだろう。
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